毒舌!医療と生物をやさしく読み解く入門

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感染経路の特定は困難。対策に問題はないのか?
"院内感染2"〜事例からは



 院内感染1

 様々なところに、病原菌が潜む病院で、「感染経路を特定」するのは、非常
な困難を極める。現状の対策に盲点はないのか?問題点と解決策をあぶり出す。


【最近の"院内感染"事例】

 先週も記した通り、日本では、年間に約2万人が、「"院内感染"で死亡する」
と言われている。その内の約70%くらいは、"薬物に耐性を持つ感染症"が原
因である。しかし、それ以外でも、"院内感染"は起こっている。

             《最近の事例では・・・》
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2005年6月17日
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[事例1]

私の地元にある『札幌医大病院』では、第2内科病棟の入院患者4人が「急性
C型肝炎に感染」し、"院内感染"可能性があると発表。

感染が確認された患者は、40代、70代、80代の男性各1人と70代の女
性が1人。6月10〜15日にかけて、感染が判明。入院時、4人とも、「C
型肝炎検査は陰性」だった。

[その後の対策]

4人の血液サンプルを、国立感染症研究所に送り、詳しい「ウィルスの遺伝子
配列(遺伝子解析)」を調べている。→ これにより、"感染源"を特定すること
は出来る。

しかし、感染力の弱いC型肝炎ウィルスがどういう経路で、感染してしまった
かを特定するのは難しい。可能性としては、「人工透析や輸血の過程」「ウィ
ルスに汚染された注射針を刺す(数%)」などが考えられるが、これらを追跡す
るのは、非常に困難なことである。

[問題点]

ここの病院では、1996年、B型肝炎の"院内感染"により、3人の入院患者
を劇症肝炎で、死亡させて以来、「院内感染防止策」に力を入れてきた。

具体的には、2002年12月「感染症対策マニュアル」を策定。今年4月に
は、"院内感染"に詳しい医師2人を含む4人体制の管理室を設置し、啓発。

   「それにも関わらず、"院内感染"は起きてしまったのだ・・・」
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2005年6月28日
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[事例2]

『信州大学病院』は、今年1月に、同病院で、手術を受けた長野県内・60歳
代の男性が、「B型肝炎に感染」し、今月、劇症肝炎を発症して、死亡してい
たことを明らかにする。

この男性は、消化器系のガンの摘出手術を受けるために、入院。治療前の「B
型肝炎検査では陰性」だったが、退院後の4月に、食欲不振を訴え、再検査。
「陽性」に転じていたため、再入院。

[その後の対策]

「遺伝子解析」の結果、男性が感染したウィルスと、同じ病棟に入院していた
別の患者に存在したウィルスの遺伝子配列が、極めて似ていたことが分かった。
→ "感染源"は、おおよそ特定できた。

「採血・点滴」などの手順を定めた"事故防止マニュアル"の見直し。

[問題点]

患者間で、「B型肝炎が"院内感染"」したのは、極めてまれ。

「B型肝炎」は、通常、血液を介して感染する場合が多い。だが、今回も、"感
染経路の特定"までは、至っていない。

「流れ作業でやっている"医療行為"から、経路を導き出すことは可能か?」
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*2005年4月4日
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[関連記事1]

全国腎臓病協議会、C型肝炎に関する厚労省の専門家会議で、次の様に報告。

腎臓病で、人工透析を受けている全国約25万人の内、推定で、3万人余りが、
「C型肝炎ウィルス(HCV)」に、現在、感染しているか、感染歴がある。

透析歴が長いほど、感染率が高く、25年以上の長期透析者では、53%。感
染原因は、ウィルス検査法が、確立される前の、腎性貧血治療のための輸血や
透析室での"院内感染"が、関係している可能性もアリ。
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2005年7月8日
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[事例3]

先週も記した、ほとんどの抗生物質が効かないVRE(バンコマイシン耐性腸球
菌)の保菌者が、京都市内の病院で、相次いで、確認された。

2005年1〜2月にかけて、京都市山科区の洛和会音羽病院関連で、7月5
日までに、保菌者が、104人、中京区の病院関連で、16人、合計で120
人にまで拡大している。

[その後の対策]

府と京都市の委託を受け、京大、京都府立医科大などで作る"VRE研究調査
班"が、「VREの府内全域での疫学調査」を実施することを、決定。

府内全ての病院 179施設、老人介護福祉施設・介護保険施設 167施設、
に参加を呼び掛け、年間3,000〜4,000人を検査する。7日に開かれ
た説明会には、府内の71施設が出席。

便を集めて、検査し、VREが見つかった場合には、「遺伝子解析」で、菌が
拡がった経路の解明も、行なう。

都道府県単位の「大規模なVRE疫学調査」は、全国でも初めての試み。

[問題点]

実際は、"過半数の施設の参加"を目指していると言っているが、346施設あ
る中で、参加が71施設(約20%)では、少な過ぎるのではないだろうか。も
う少し、"院内感染"(VRE)の怖さを知ってもらうためのPRが、必要。
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*2005年7月9日
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[関連記事2]

滋賀県立大は、10月に「"院内感染"の予防管理」分野・認定看護師の教育課
程を、人間看護学部・地域交流看護実践研究センターに開設。

同看護師の教育課程の設置は、全国で、17番目、滋賀県内では初めて。感染
管理分野では、近畿で、2番目となる。
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      「"院内感染"の問題点は、これだけではない・・・」


【"医療行為"に潜む問題】

 上記以外にも、"院内感染"に関する問題は、様々なところにある。それは、
ごく普通に行なっている"医療行為"の中にも、存在するのだ。

 例えば・・・

 普通、「点滴」の管の途中には、何個かの"三方活栓"が付いている。これは、
本管と支管をつなぐ分岐点の栓のことである。

 肩の静脈から、栄養剤を入れたり、腕の静脈から、抗ガン剤や抗生物質を入
れたりする場合、「点滴」の管の中は、1日中、あるいは、長時間、つながれ
ている。

 この管を使って、別の薬を短時間だけ入れる時に、"三方活栓"の内、普通は
閉めてある支管の栓を開けて、薬を入れる。その時に、栓の周囲にくっついて
いる菌、空中の菌、手や器具からの菌などが、入ってしまうのだ。

 アメリカの疾病対策疾病センター(CDC)では、1996年のガイドライン
の中で、"三方活栓"内の液を培養すると、45〜50%の細菌が出ると公表し
ている。

 1970年代から、既に、問題になっていたアメリカでは、現在、"三方活
栓"は、ほとんど使われていない。今は、日本でも、"三方活栓"から針を使わな
い"閉鎖注入システム"に切り替えるところが多くなってきたが、コストの面な
どで、全施設採用とは、行っていないのが、現状だ。

 「日本の"感染対策"は、アメリカに比べて、30年以上、遅れている」

 それ以外にも・・・

 普通、血液の凝固を防ぐ方法として、ヘパリンを使用した「ヘパロック」と
呼ばれる医療行為の取られるケースが多い。この方法は、患者が、輸液を注入
するカテーテル(管)を体内に残した際、食塩水に混ぜて、注入する。これによ
って、血液で、カテーテルが塞がるのを、防ぐということである。

 ヘパリンと食塩水をその場で混ぜたり、直ぐに使うのならば、それほど、問
題はない。だが、面倒だからと、「作り置き」にしていたモノを使うと、その
中で、"細菌が増殖"しているということが、充分にあり得るのだ。

  「このように、ごく普通の"医療行為"の中にも、危険は一杯である」


【"救世主"となり得るか…】

 頼みの"救世主"に入る前に・・・

 一般に、"抗生物質"は、次の様に言われている。

      「耐性菌を生まない"抗生物質"は、存在しない」

 異種間の菌の間で、「薬剤耐性」を受け継ぐこともある。それには、"プラス
ミド"という細胞核の外にある遺伝子が関与。この遺伝子は、簡単に飛び出して、
他の菌の遺伝子に入り込みやすい性質を有している。

 だから、ある菌だけが、持っている「薬剤耐性」を、一緒にいる別の菌が増
殖する時、自分の遺伝情報に、取り込んでしまうのである。耐性を重ね持つ「
多剤耐性菌」は、この性質のために、存在する。

 これを踏まえた上で・・・

 ニューヨーク・ボストンにあるノース・イースタン大学の薬学科助教授サミ
ュエル・マシューズ氏は、1990年代、近郊の退役軍人病院で、感染症に、
取り組んでいた。

 彼は、感染症に対する苦い思い出から、その"救世主"に期待を寄せている。

 その"救世主"を開発したのが・・・

 アメリカの製薬大手「ワイス」である。期待の"救世主"=新しい抗菌剤『チ
ガシル』(一般名チゲサイクリン)という名前だ。これは、"グリチルサリン系"
という新しい分類の抗菌薬に当たる。

 今年1月、食品医薬品局(FDA)に、"ファストラック"に指定された。この
"ファストラック"とは、完治が難しい疾患に対し、高い治療効果が、期待出来
そうな新薬を、FDAが優先的に審査する制度のことである。

 申請は、「致命的な腹部・皮膚感染症」の適応症でしている。しかし、実際
の治験では、「薬物耐性型肺炎」において、行なわれている。つまり、最終的
には、薬物耐性型の"院内感染"なども、視野に入れていると言うことだ。

 この薬品の特徴とは・・・

 先ず、一番の特徴は、「細菌が、テトラサイクリン系の抗菌薬に耐性を持つ
仕組み自体を、破壊する」ということ。

 それは、細菌の2つの主な防衛機能を、阻止することで、効き目を現わす。
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[細菌の防衛機能]
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1.薬物排出ポンプ

  抗菌剤が、作用する前に、細菌細胞が、これを排出する能力。

2.リボゾームの保護

  細菌細胞は、抗菌剤が、リボゾームと呼ばれる小分子と結合するのを防ぎ、
  細菌の成長を、永続させる新しいタンパク質の生成を止める薬の目的を、
  果たせないようにする。
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 しかし、この強力な"救世主"『チガシル』も、"抗生物質"である以上、いつ
かは、耐性を獲得してしまうだろう。しかも、最近の細菌(^^)が、抗菌剤をか
わす突然変異に、ますます巧みになってきているという悪い情報もある。

 救いと言えば、『チガシル』が最終の手段で、錠剤ではなく、注射剤である
ため、病院でなければ、患者が投与することを不可能にしている点である。

 だが、細菌に多くの耐性を獲得させた主要因である「医師の"抗生物質"過剰
投与」を防ぐことには、繋がらない。逆に、助長してしまう可能性すらある。
医師は、抗菌剤を処方されている患者の多くが、細菌に関する病気ではなく、
「ウィルス疾患」であるということを、良く認識すべきである。

 一方、いたちごっこである抗菌剤の世界も、大きな問題を抱えている。それ
は、経済的な背景と耐性獲得の短期化により、「メーカーの抗菌剤離れ」が顕
著に表われてきている。現在、世界の大手15社で開発中の抗菌剤は、わずか
5つしかない。

 現実、メーカーがこの様な体制。しかし…


「現代において、抗菌剤を全く使わない医師は少ない。でも・・・

  行き着くところまで行ってしまったら、その後、どうするのだろう!?」


 **貴方にとって人ごとではない・・・→ http://tinyurl.com/vhfl4

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