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猛吹雪の日に逝ったアイツ・・・2
〜突然、愛犬を襲った"インスリノーマ"の恐怖


 「全然気が付かなかった・・・」"インスリノーマ"っていったい何だ!?

 *前号を読んでいない方→ http://www.unlimit517.co.jp/medi90.htm

【ひょんな事から…】

 話は少し戻るが「石山通り動物病院」の院長・斉藤聡氏と私はちょっとした
縁があった。それは私が北海道の恵庭市という所にある専門学校で少しの間、
講師をしていた時の事である。

 斉藤院長は週に2コマ、動物看護師を養成するコースで授業を持っていた。
その時に、実技は助手として、講義中は先生の犬の世話をしていた。印象とし
ては優しい先生だったし、何よりペットに対してはとても愛情が感じられた。

 一時期とは言え、関わり合った先生の病院に、愛犬が最後の場面でお世話に
なるとは・・・。

【現実から逃避する毎日】

 猛吹雪が続く日々でもあったが、私は会社に行く気力を全くなくしていた。
考えるのは「ミルクが元気になった姿」だけ・・・。でも、現実は見舞いに行
っても彼の体が起きあがっている事はなかった。

 ますます悪くなっている状態。「頼む!目を開けて起きてくれ!!」

 主治医の川村先生はそんな風に取り乱している私に気を遣いながらも獣医師
として、

「田畑さん、原因を追究するためにも体力的にきついかもしれませんが、血液
 検査をやってみましょう」

 確かに原因がはっきりしなければ、治療の施しようがない。

私は「先生、お願いします」大きな希望を込めて、そう答えるしかなかった。

【検査結果は出たが・・・】

 血液検査の結果は『血糖値が通常に比べて、顕著に低かった』。まさにイン
スリノーマによる低血糖症の典型的な値を示していた。

 その時のミルクの顔は今でも脳裏に焼き付いているが、殆ど目を閉じて、体
は意志を持たず、死を待っているだけのように見えた。「一縷の望みが・・・」

 私は一生懸命に説明してくれる川村先生の顔が既に見えなくなっていた。

「お前はもう遠くに行ってしまうのかなぁ〜」と暗澹たる気持ち、誰もいなけ
れば、号泣していただろう。私はその夜、もう一度、見舞いに来ようと思った
が、足を向けたのは病院ではなく、ススキノのスナックであった。

 もう、彼の死が間近に迫っていることは察知していた。その現実から逃げた
いが為に、私は酒の力と状況を知っている2人の女性に頼ってしまったのであ
る。病院で、また、一人の部屋で愛犬の"死"を耐える事は到底無理であった。

  「本当に弱い人間だ。でも、しょうがないじゃないか・・・だって」

 彼の死を携帯電話で受けたのは9時30分。私は人目をはばからず、大泣き
してしまった。二人の女性も一緒に泣いてくれた。普通ならば、この時点で直
ぐ病院に行くだろう。

     「先生はなんて冷たい飼い主だと思っただろうな」

 でも、足が向かなかった。"死"という現実を受け入れたくなかった。何と言
っても死んだミルクの顔を見たくなかった。

【最後の夜に】

 次の日も札幌は猛吹雪。

 だが、今日はミルクの亡骸を引き取りに行く。ずっと暮らしていたこの部屋
に戻って、心ゆくまでくつろいでもらうためにも絶対に…。

 病院は時間外で閉まっていた。インターフォン越しにやり取りをすると事情
を分かってくれた先生が出て来てくれた。直ぐ、奥に行って、その先生はミル
クを花と一緒に抱いてきてくれた。

 私は病院に対する御礼と当日はいなかったが最後まで手を尽くしてくれた川
村先生への謝辞を残して、病院を後にした。

 彼のにおいの付いた布団にくるまれたミルク。だが、心なしか苦しそうな顔
で歯を食いしばっている表情が見て取れた。

 その夜は10年間、彼と過ごした日々の事をずっと語り合った。彼の表情が
幾分和らいだように感じた。

 ずっと一緒に寝ていたベッドで最後の夜を過ごした。彼の体は硬直から解放
されたかのようにくつろいでいた。「良かったな!」

 翌日、動物霊園で「今までずっと有り難う!」という言葉を掛け、荼毘に付
した。寂しがり屋のミルクのために他の動物と一緒に焼いてもらった。

          「みんなと仲良くやれよ!!」

 その日の札幌は、ミルクが天国に行くのを見守るが如く、あの数日続いた猛
吹雪がうそだったように快晴だった。


《MEMO.0026》インスリノーマ(Insulinoma)

 この病気について、ペット関連ではフェレットやハムスターなど齧歯類に多
く見られます。通常、血糖値はインシュリンというホルモンにより安定してい
ます。インシュリン分泌細胞は、腹部にある膵臓線の中にあり、この細胞が分
泌するインシュリンが少な過ぎると「糖尿」になり、インシュリンが過剰に分
泌するとインスリノーマ(腫瘍)になり、低血糖症を起こします。

 ★ミルクもそうでしたがつぎに挙げる症状が顕著になると危ない!!
(言い訳ではありませんがそれまでは非常に分かりにくい。特に犬の場合)

●衰弱、倦怠(あるいは疲労)→この時点で「動物病院」へ直行すべき
              [たとえ、他の病気だったとしても]
●後肢の麻痺のため、うまく立ち上がる事が出来ない。
●すい液分泌が非常に多くなる。
●口元を前肢で掻きむしる(嘔吐の前兆)。
●けいれん、昏睡状態

*本当に"危険な病気"だということを認識して下さい。私の経験からも。
 

{大変お世話になった}

*札幌・石山通り動物病院 http://homepage3.nifty.com/ishiyama-dori/


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