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『早熟の天才』をある日、
奪っていったそんな現代病1

〜若くして、ススキノのママになった
女性を襲った"パニック症候群"



 彼女とは16歳の時からの付き合いだった。
 
 付き合いと言っても"ホステス"と"お客"。でも、既に7年経過していた…。

【頭の回転がめちゃくちゃ早い】

 彼女(以下Z)と初めて会ったのは、ススキノにある行き付けのスナックであ
った。本当は札幌市の条例で18歳以下は、夜の飲食業では働けないのだが、
Zは当時「18歳」ということになっていた。

 顔見知りのMというホステスにZを紹介してもらったのだが、メイクといい、
会話の内容、テンポといい、とても「16歳」の小娘とは思えなかった(本当
の年齢は下記"彼女の逮捕時"に初めて知る)。

 接客もソフトクリーム屋で店員をやっていた以外は経験がなかった。しかし、
色々な話題を振っても頭の回転が良いので付いてくる。最近のレベルが低いホ
ステスに食傷気味だった私は、少しの時間だったが、彼女に直ぐ興味を持った。

【最初の"同伴"がわたしだった】

 Mの後押しもあり、私はZと次の週に"同伴"する事になった。彼女が望んだ
のは"つぼ八"と"ナマコ酢"。

          「それで本当にいいのかい?」

 思わず聞いてしまった。それほど、質素なリクエストだった。水商売じゃな
くて、普通の女性としても同様だろう。しかも若い娘が"ナマコ酢"とは…ちょ
っと笑ってしまった。

 そんな逸話もあった「最初の同伴」から既に3年以上が経過した。

 16歳でススキノ・デビュー。この3年間で同僚ホステスに年齢をチクられ
て、2度逮捕される。逮捕後、一時はカラオケボックスに勤めるが、結局、ク
ラブを経て、スナックに復帰。

    「19歳になったZは、遂に自分で店を持つまでになった」

【Zの店で再会を果たす】

 この3年間、私は自分自身、環境が大きく変わり、ススキノへ足を向ける事
がほとんどなかった。それでもこの華やかな街で、再び、飲みたかったのも事
実である。

 ある時、Zが最初に勤めていた店の同僚ホステスが私のところに電話をくれ
た。内容を聞いてみると「Zが店を出したから、来てくれ」との事だった。

 私の環境も一段落付いたところだったので、ふたつ返事でOKをした。

 この店でZと再会してから約3年くらいは、店も彼女の精神や健康状態も非
常に上向きで、常連客もたくさん出来た。

 私は、Zとも従業員ともとてもうまくやっていた。周年やZや従業員の誕生
日等というお祝い事には、全て「花」「プレゼント」を送らせてもらった。

 なんかお客というよりも「友達」という感じで、店のみんなと付き合ってい
た(私がそう思っただけかもしれないが・・・)。

【歯車が狂い出す・・・】

 だが、4周年を迎えた辺りから様子が少しおかしくなってきた。Zの店に出
る回数が極端に減って来たのだ。出てきたとしても、時間が極端に遅かったり、
お客さんと些細な事で口論になったりしていた。

          「何か、おかしいな!?」

 この症状が段々と酷くなり、病院に通院。飲む薬の種類も量もどんどん増え、
このZに使われている従業員のホステスにも冷たく接するようになり、店の雰
囲気はますます悪い方に流れていった。

 常連のお客さんも店に来る回数が減った。従業員も気心が知れて、本当の事
を言える人には「愚痴」を零すようになった。こういう状況になり、Zは、ほ
とんど店に出勤して来なくなった。

 Zも自分自身で「パニック症候群」という難病を抱え、非常に大変な状態だ
ったと思う。けれど、ママがそういう病気に罹っている中で、半年以上も店を
任されている従業員2人の精神的、肉体的負担の方も限界に近づいている。

 その最中にも、Zの"不安発作"は回数が増えていた。

「Zママがこのまま、薬に頼り過ぎ、自立する事を考えなければ、店と従業員
 共々、倒れてしまうだろうことは明白であった・・・」

               
              〜来週に続く〜

 
《MEMO.0032》不安神経症(パニック症候群・パニック障害)[概略]

 理由もなく(確定出来ない場合も)「突然、激しい不安」に襲われる症状の総称。

 不安に襲われるものの対象となっているものがないため「不安感は身に迫る
恐怖感」というようなものになりやすい。不安に襲われることで、様々な身体
症状が起こるが、体のどこかに異常があるわけではない。

 この"不安発作"を繰り返すことを「不安神経症」と呼ぶ。

 そして、"不安発作"を起こすことによって"不安発作"を起こすのではないか
と不安になることを「予期不安」という。

 この「不安発作」を食い止める事が"パニック症候群"では一番難しい治療と
されています。これをうまくコントロール出来ない限り、通常の社会生活を営
んで行くのはなかなか困難なものになっていきます。

*この病気は複雑な要因が絡まり合い、決して、簡単には説明出来ないのです
 が、概略だけでも分かっていただきたかったので、敢えて記述しました。


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